2016年 11月 05日
gentleふりかえり〜ワークショップのこと |
昨年のgentleでの展示からはじまったワークショップ。
はじめはちいさな刺繍で何を完成させられるだろうと、優子さんと模索しながら打ち合わせをして、表紙をつけたあのかたちになるまで実は結構な試行錯誤があった気がします。
だんだん記憶は薄れるけれど。
そして何より
刺繍の経験が無い方々にどうしたら楽しく、ちょっと難しくても完成した時の満足感を味わっていただけるか、そのバランスをずいぶん考えました。
簡単すぎる刺繍はつまらないし、かといってどれくらいなら出来るのかも、今となっては私は普通にしていることなだけに難しくて。
それで今のように
まずは2種類のかステッチを直線と曲線で練習してもらってから、モチーフや糸選びをするというスタイルにしてみました。
練習のとき、大抵の方は糸を引く力や縫い幅に戸惑って、どれくらいが自分の「手」なのかを探っているようです。
あまりに小さく細かく縫っている方やあまりに大胆に縫っている方にはそれなりにちょっとだけ声をかけるけれど、なるべく自分のちょうどよいところを見つけてもらうようにしています。
なんとかなりそう…戸惑いつつも不安を解消される方もいれば、こんなんで花の刺繍なんて出来上がるのかなぁ?と不安を募らせる方もいるけれど、いろいろな思いを巡らせながらの練習刺繍を踏まえて本番のモチーフや糸選びをしていただきます。
自信のない方はちょっと簡単そうなのを、チャレンジャーな方は難しくてもやってみたいとか、はたまた何と言っても雰囲気重視、この花をこんな色で仕上げたい、などなどそれぞれの想いはモチーフと糸選びに込められていきます。
ここからが驚き。
今回5回目のワークショップだけれど
必ず毎回思うことは、練習から本番になった途端にみなさんが別人のようにスイッチが入るということ。
同じ人とは思えないほどなのです。
私が話していないこと
糸で埋めた葉っぱや花びらの上から違う糸でアクセントをつけたり、濃淡をつけたり、図案には無いちいさな粒を付け足したり、描いていないところに何かを足していたり…
のびのびと糸を使って描く様子は楽しそうで、そしてどんどん作品に対する愛着ができていきます。
始まると私はあまり用がなくて、糸が絡まったときや、裏の処理で困った時、あとは糸選びで迷った時なんかにちょっと呼ばれるくらい。
本当に集中して長い方で3時間くらい。
そして完成すると本当に毎回感動するほどの作品になります。
今回は2度目のご参加の方が4名、初めての方が1名の計5名でした。
経験のある方はやっぱり安定しているけれど、さらに丁寧に作品としてきちんと仕上げたいとの想いが強いので、イメージがしっかりあってそれに近づけるための経験という感じでした。
自分で糸を揃えるのは大変なので
並べたたくさんの糸の中から迷いつつも好きな色を思ったように、自由に使っていただきます。
一切の決まりはなく
固定観念もなく、
想いのままに。
では今回も感動の5名のみなさんの作品をお披露目です。
2度目の参加の方です。
簡単そうに見えるけれど一箇所にきちんと集めるように刺さないと綺麗な扇型にならないニガナのモチーフ。
イメージではもう少し先に伸びた大きな花を刺したかったのだけど糸を引くと小さくなってしまったのだとか。
それを補うためにと、ご自分で濃いめの色を足して刺したために花の陰影がでてとても雰囲気のある色合いに。
自由に、そしてこだわらず、臨機応変に刺したことで本当の意味で「自分の作品」になったような気がします。
そのことそのものが素晴らしいですよね。
こちらは2度目のご参加なのだけど、立派な先生に素晴らしい刺繍を習っている生徒さんです。
私のワークショップに来ていただくのが恐縮ですが、繊細な一本どりの刺繍は雰囲気が全然違うのだとか。
毎回、やりたいことがはっきりしていて、刺繍そのものに慣れていらっしゃるので仕上がりは当然ですが別格です。
今回は花びらの中を濃いめの色を重ねようか迷われていましたが結局そのままで。
細かいデイジーの花びらはひとつひとつの糸の力の強さを揃えるのが難しいのだけど、そこはさすがです。
しかも、私の不手際で最後のアイロンで生地をちょっと汚してしまったのだけどそこをささっと糸で埋め尽くして見えなくして仕上げてくださいました。
地面があることで、一気に風景になり
素敵に仕上がりました。
2度目のご参加で、あれからご自分でも少し刺繍しているとのことで、これからのことを踏まえた参加という感じでした。
この後、また刺繍を楽しんでいただくことを考えて、
今回は使わないことだけど…ということもちらちらとお話ししながらの作業でした。
モチーフや糸選びもイメージや好みがあって、やはりしっかりと作品として仕上げたいという想いがありました。
ゆとりもあって、すっかり楽しんでいらっしゃる様子をみて、続けて伝えていくことでさらに難しいことにもチャレンジしていけるのかもしれないと、こちらも教えることの楽しさを改めて感じたりしました。
きっとお家でまたどんどん自分の楽しみが広がるのだろうなぁと、私がワークショップをはじめた原点を思い、嬉しくなりました。
またいつかご参加いただけるそうなので、続けていくことの経過も私にとってよ新しい楽しみです。
こちらが今回初めての方。
練習のときはちょっとコツをつかむのに苦労されていて、縫い幅をちょうどよくしたり強さを調整したりすることに少し戸惑っていました。
それなのに!です。
本番の刺繍はとっても難しいモチーフ。
はじめに、この花をきれいに刺すためのコツをお話しして、とにかくそれだけを徹底して気をつけてくださいとお話ししました。
すると、本当に丁寧に時間をかけて一本一本きちんと刺していて、しかも葉っぱや花の一部には濃いめの色を重ねて筋をつけたり陰影をつけたり。
色使いも丁寧に考えて選び、明るくはっきりとして素敵な花に仕上がりました。
不安そうだった表情が、帰りには笑顔でうれしそうに額を抱えて帰られるのをみて、あぁほんとにこれだからワークショップがやめられないとまた思うのでした
最後にご紹介するのは優子さんのお母さま。
昨年に続き2度目のご参加です。
少しずつ日々のできごとが記憶の彼方に消えていく
昔はたくさんの手仕事を細やかにされていたのに、今は目も手も思うようには動いてくれない
そんな思いは、今日はちょっと忘れて
とにかく目の前にある糸で好きなものを可愛く作っておかえりいただけたらと思っていました。
練習のとき、ちょっと刺し方がわからなくなって戸惑うこともあったけれどモチーフ選びになるどとても楽しそうで、なんと用意していなかったポピーのポーチからその場で急遽モチーフを描いてお渡ししました。
嬉しそうにポピーを眺め、茎の色をブルーにしてはじめは花を紫にすると予定でした。
少し席をはずして戻ってくるとお母さまはいつのまにか紫をちょっと横に置いてきれいな黄色を花の場所に。
ブルーと黄色の組み合わせがとても新鮮で美しく、凛としてかわいらしく、
この糸選びのセンスが素晴らしかった。
針を動かすことに不安を募らせていたけれどモチーフを目の前になんだかとてもやる気になって、茎の下から小さく縫い始めました。
はじめ、針を刺す位置がちょっと気になったので、何度か声をおかけすると
「あぁ、そうだった、こっちね」
そう言って、刺し直してはまたちょっと反対に刺したりして。
私も意識してそこはお年寄りあつかいせず、ちょっと厳しく。
きっとそのほうが満足していただける
、そんな気がしました。
(あとから優子さんが、お母さまは何かを教わったりするけれど、お年寄りだからとみんな優しすぎてきちんとできていなくてもOKにされるのが嫌なんだとか 笑)
途中からは私もほとんど声をかけずにちらちらと見ていたけれど、黙々と刺し続け、その作業は丁寧で根気強く、そして生き生きとしておられました。
もう以前のように、多くのことにエネルギーを注げなくなってしまったけれど、
ご自分の「かわいい」や「すてき」に対する妥協のなさ、しっかりとしたこだわりをこうしてお持ちだということに、とても感動したのでした。
額に入ったものを何度も眺め、恥ずかしそうに、そして嬉しそうに笑っている姿はきらきらしていました。
こういうかわいいものが大好きだった、亡くなった妹さんに見せたかった、とおっしゃって。
ワークショップは毎回必ず私のほうが嬉しいことが多いほどで、やってよかったとしみじみ思うのですが、今回もまた改めて作品を作ることにみなさんがとても充実されているのをみて、いつもわたしが製作しているときの気持ちを分かち合えるような、そんな気持ちになりました。
額を作ってくださり、企画、提案してくださったgentle夫妻、お越しくださったみなさまありがとうございました。
いつかワークショップに参加してみたいという方、チャンスがあれば是非お申し込みお待ちしております。
長くなってしまいました。
読んでいただいてありがとうございます♪
はじめはちいさな刺繍で何を完成させられるだろうと、優子さんと模索しながら打ち合わせをして、表紙をつけたあのかたちになるまで実は結構な試行錯誤があった気がします。
だんだん記憶は薄れるけれど。
そして何より
刺繍の経験が無い方々にどうしたら楽しく、ちょっと難しくても完成した時の満足感を味わっていただけるか、そのバランスをずいぶん考えました。
簡単すぎる刺繍はつまらないし、かといってどれくらいなら出来るのかも、今となっては私は普通にしていることなだけに難しくて。
それで今のように
まずは2種類のかステッチを直線と曲線で練習してもらってから、モチーフや糸選びをするというスタイルにしてみました。
練習のとき、大抵の方は糸を引く力や縫い幅に戸惑って、どれくらいが自分の「手」なのかを探っているようです。
あまりに小さく細かく縫っている方やあまりに大胆に縫っている方にはそれなりにちょっとだけ声をかけるけれど、なるべく自分のちょうどよいところを見つけてもらうようにしています。
なんとかなりそう…戸惑いつつも不安を解消される方もいれば、こんなんで花の刺繍なんて出来上がるのかなぁ?と不安を募らせる方もいるけれど、いろいろな思いを巡らせながらの練習刺繍を踏まえて本番のモチーフや糸選びをしていただきます。
自信のない方はちょっと簡単そうなのを、チャレンジャーな方は難しくてもやってみたいとか、はたまた何と言っても雰囲気重視、この花をこんな色で仕上げたい、などなどそれぞれの想いはモチーフと糸選びに込められていきます。
ここからが驚き。
今回5回目のワークショップだけれど
必ず毎回思うことは、練習から本番になった途端にみなさんが別人のようにスイッチが入るということ。
同じ人とは思えないほどなのです。
私が話していないこと
糸で埋めた葉っぱや花びらの上から違う糸でアクセントをつけたり、濃淡をつけたり、図案には無いちいさな粒を付け足したり、描いていないところに何かを足していたり…
のびのびと糸を使って描く様子は楽しそうで、そしてどんどん作品に対する愛着ができていきます。
始まると私はあまり用がなくて、糸が絡まったときや、裏の処理で困った時、あとは糸選びで迷った時なんかにちょっと呼ばれるくらい。
本当に集中して長い方で3時間くらい。
そして完成すると本当に毎回感動するほどの作品になります。
今回は2度目のご参加の方が4名、初めての方が1名の計5名でした。
経験のある方はやっぱり安定しているけれど、さらに丁寧に作品としてきちんと仕上げたいとの想いが強いので、イメージがしっかりあってそれに近づけるための経験という感じでした。
自分で糸を揃えるのは大変なので
並べたたくさんの糸の中から迷いつつも好きな色を思ったように、自由に使っていただきます。
一切の決まりはなく
固定観念もなく、
想いのままに。
では今回も感動の5名のみなさんの作品をお披露目です。
2度目の参加の方です。
簡単そうに見えるけれど一箇所にきちんと集めるように刺さないと綺麗な扇型にならないニガナのモチーフ。
イメージではもう少し先に伸びた大きな花を刺したかったのだけど糸を引くと小さくなってしまったのだとか。
それを補うためにと、ご自分で濃いめの色を足して刺したために花の陰影がでてとても雰囲気のある色合いに。
自由に、そしてこだわらず、臨機応変に刺したことで本当の意味で「自分の作品」になったような気がします。
そのことそのものが素晴らしいですよね。
こちらは2度目のご参加なのだけど、立派な先生に素晴らしい刺繍を習っている生徒さんです。
私のワークショップに来ていただくのが恐縮ですが、繊細な一本どりの刺繍は雰囲気が全然違うのだとか。
毎回、やりたいことがはっきりしていて、刺繍そのものに慣れていらっしゃるので仕上がりは当然ですが別格です。
今回は花びらの中を濃いめの色を重ねようか迷われていましたが結局そのままで。
細かいデイジーの花びらはひとつひとつの糸の力の強さを揃えるのが難しいのだけど、そこはさすがです。
しかも、私の不手際で最後のアイロンで生地をちょっと汚してしまったのだけどそこをささっと糸で埋め尽くして見えなくして仕上げてくださいました。
地面があることで、一気に風景になり
素敵に仕上がりました。
2度目のご参加で、あれからご自分でも少し刺繍しているとのことで、これからのことを踏まえた参加という感じでした。
この後、また刺繍を楽しんでいただくことを考えて、
今回は使わないことだけど…ということもちらちらとお話ししながらの作業でした。
モチーフや糸選びもイメージや好みがあって、やはりしっかりと作品として仕上げたいという想いがありました。
ゆとりもあって、すっかり楽しんでいらっしゃる様子をみて、続けて伝えていくことでさらに難しいことにもチャレンジしていけるのかもしれないと、こちらも教えることの楽しさを改めて感じたりしました。
きっとお家でまたどんどん自分の楽しみが広がるのだろうなぁと、私がワークショップをはじめた原点を思い、嬉しくなりました。
またいつかご参加いただけるそうなので、続けていくことの経過も私にとってよ新しい楽しみです。
こちらが今回初めての方。
練習のときはちょっとコツをつかむのに苦労されていて、縫い幅をちょうどよくしたり強さを調整したりすることに少し戸惑っていました。
それなのに!です。
本番の刺繍はとっても難しいモチーフ。
はじめに、この花をきれいに刺すためのコツをお話しして、とにかくそれだけを徹底して気をつけてくださいとお話ししました。
すると、本当に丁寧に時間をかけて一本一本きちんと刺していて、しかも葉っぱや花の一部には濃いめの色を重ねて筋をつけたり陰影をつけたり。
色使いも丁寧に考えて選び、明るくはっきりとして素敵な花に仕上がりました。
不安そうだった表情が、帰りには笑顔でうれしそうに額を抱えて帰られるのをみて、あぁほんとにこれだからワークショップがやめられないとまた思うのでした
最後にご紹介するのは優子さんのお母さま。
昨年に続き2度目のご参加です。
少しずつ日々のできごとが記憶の彼方に消えていく
昔はたくさんの手仕事を細やかにされていたのに、今は目も手も思うようには動いてくれない
そんな思いは、今日はちょっと忘れて
とにかく目の前にある糸で好きなものを可愛く作っておかえりいただけたらと思っていました。
練習のとき、ちょっと刺し方がわからなくなって戸惑うこともあったけれどモチーフ選びになるどとても楽しそうで、なんと用意していなかったポピーのポーチからその場で急遽モチーフを描いてお渡ししました。
嬉しそうにポピーを眺め、茎の色をブルーにしてはじめは花を紫にすると予定でした。
少し席をはずして戻ってくるとお母さまはいつのまにか紫をちょっと横に置いてきれいな黄色を花の場所に。
ブルーと黄色の組み合わせがとても新鮮で美しく、凛としてかわいらしく、
この糸選びのセンスが素晴らしかった。
針を動かすことに不安を募らせていたけれどモチーフを目の前になんだかとてもやる気になって、茎の下から小さく縫い始めました。
はじめ、針を刺す位置がちょっと気になったので、何度か声をおかけすると
「あぁ、そうだった、こっちね」
そう言って、刺し直してはまたちょっと反対に刺したりして。
私も意識してそこはお年寄りあつかいせず、ちょっと厳しく。
きっとそのほうが満足していただける
、そんな気がしました。
(あとから優子さんが、お母さまは何かを教わったりするけれど、お年寄りだからとみんな優しすぎてきちんとできていなくてもOKにされるのが嫌なんだとか 笑)
途中からは私もほとんど声をかけずにちらちらと見ていたけれど、黙々と刺し続け、その作業は丁寧で根気強く、そして生き生きとしておられました。
もう以前のように、多くのことにエネルギーを注げなくなってしまったけれど、
ご自分の「かわいい」や「すてき」に対する妥協のなさ、しっかりとしたこだわりをこうしてお持ちだということに、とても感動したのでした。
額に入ったものを何度も眺め、恥ずかしそうに、そして嬉しそうに笑っている姿はきらきらしていました。
こういうかわいいものが大好きだった、亡くなった妹さんに見せたかった、とおっしゃって。
ワークショップは毎回必ず私のほうが嬉しいことが多いほどで、やってよかったとしみじみ思うのですが、今回もまた改めて作品を作ることにみなさんがとても充実されているのをみて、いつもわたしが製作しているときの気持ちを分かち合えるような、そんな気持ちになりました。
額を作ってくださり、企画、提案してくださったgentle夫妻、お越しくださったみなさまありがとうございました。
いつかワークショップに参加してみたいという方、チャンスがあれば是非お申し込みお待ちしております。
長くなってしまいました。
読んでいただいてありがとうございます♪
by furu_0629
| 2016-11-05 15:27
| furu*furu