「ようこそ」
机の上に置かれた紙の
最後に書かれたひとことでした。
読み返しても
この最後の言葉を含む一文に胸が熱くなります。
道内にいてものつくりをしているだけでは
知らなかったその扉。
「工房からの風」
という、毎年秋に行われるクラフトの野外展のこと。
50人の作家さんが選ばれて出展する、
あらゆるジャンルの、工藝
いわゆるものつくりの人たちの、憧れのフィールドでした。
インスタで、何かすてきだなぁと思って開いてみると、ハッシュタグで「工房からの風」と書いてある。
うわぁ
ほんとにすごい人たちが出る展示会なんだ。
すてきな人たちの
すてきな作品の
すてきな投稿をちらちらと眺め、
いつか見に行けたらいいなぁと(千葉なので)思っていました。
今年の春
何気にみていたfacebookの投稿で
「工房からの風、2次募集のお知らせ」
を目にしました。
年齢制限があるらしかったので、だめだろうなぁと思いつつ要項をみてみると…
応募するならわたしには今年がラストチャンス。
ちようど大丸の準備中。
他にもやらなければならないことで3月はわたしにはほんとうにきつかった。
でも、そんな中でずっと思っていたことも確か。
わたしはどこに向かっているんだろう。
何を大切にしてるんだろう。
幻じゃないものを、感じたいと思っていました。
ほんとう を。
要項をダウンロードして、1日かけて考えて何度も書き直して、写真はプリントして提出だったので写真屋さんへいって色や明るさも細かくお願いしてプリント。
「だめ元!」
前向きなんだか後ろ向きなんだかわからない、この言葉を支えのように言い聞かせて締め切りの数日前にポストへ。
ドキドキと結果を待つゆとりもないまま
大丸が始まり、たくさんの出逢いと作品たちの旅立ちに目まぐるしいその間に…
一本の電話と、大きめの封筒が届きました。
「選考通過 作家各位」
と書かれていて
どこにもはっきりと「あなたは通りました!」的なことは書かれていません。
(のちにミーティングで多くの作家さんが通知を読み解くのに時間がかかったと言っていておもしろかったです)
要は受け取ったわたしたちは
まさか自分が通過するとは、というスタンスなので、はっきりと「おめでとう」とか
「通過しました!」とか書かれていない、
ふんわりと、もしかしたらわたし通ったの?
くらいの感じでは
「えぇ?ほんとかなぁ、よく読んだら勘違いなんじゃないの?」とすぐには信じられないほどの通知、ということでした。
でもちゃんと読めば書いてある。
「選考通過 作家各位」。
あのステージに
わたしは向かって歩けるんだ。
そう思うだけで、朝から涙と震えがとまりませんでした。
これから大丸だというのに。
そしてそんなその日の大丸の朝いちのお客さまが、なんとその工房からの風が行われる、千葉のニッケコルトンプラザから歩いてすぐのところに住んでいる、という女性でした。
まだ公にはできないけれど、秋に行く予定だと話すと見に行きます!と嬉しそうにいくつか作品を選んで帰られました。
こんなこともなんだか不思議でした。
4月末
1度目のミーティングに行ったのが、あの鞄忘れ事件のポンコツ東京めぐり。
そしてその日 机に置かれた紙に書かれた言葉が
冒頭のもの。
ミーティングでは主催の方の放つ言葉が
柔らかでそれでいて熱くて
まっすぐどーんと伝わってくる
おさえてもおさえても胸がいっぱいになるような
ものすごく緊張するのに
どこか安心するような不思議
「あなたのど真ん中を持ってきてください」
「当日、炭酸しゅわっしゅわできてください」
「真剣って、楽しいじゃない?」
どの言葉も
あぁ、 すごい世界に出逢ってしまった
そんな気持ちになるものばかり。
机の上の紙にはこの野外展への真摯な想いがつづられ、最後の一文はこんなふうに締められていました。
工房からの風
この風を起こし、渡らせていく人たちへ、
ようこそ。
わたしがこうして刺繍をして、見てもらえる場所を提供してくれる人がいて、使ってくれる人たちがいて、身近に支えてくれる人がいて、ほんとうにたくさんの出逢いがあって、今また新たな扉の前に立っています。
振り返ったら
みなさんが笑って
「いっといでー」と言ってくれてると思って
思い切り、精一杯、秋までに取り組んで準備します。
本気のひとが集まるフィールドです。
恥ずかしくないわたしで。
誇らしげな作品たちと。
わたしの風を起こして、渡らせていけるように。
○工房からの風○
10/13.14
千葉県市川市
ニッケコルトンプラザ
もちろん来られそうな方はぜひ!
50個の個展があつまったような野外展だそうです。
見応えたっぷりだと思います!